今日、心臓の音は聞えない そんなもの、並木道やあづまや向きだ 俺は胸に弾丸を受けて倒れ 最後にこう考えただけだ 今度はもう帰れない 俺は去り、誰かが来る 俺たちは出来なかった、出来なかった 周りを見廻すことが でも息子たちが、息子たちが戦鬪に出かけるぞ 誰かが、あとは洪水にでもなれと 地獄に飛び込むつもりで塹壕を出たが 俺が塹壕を後にしたのは 洪水なんかなくなすためだった 今、俺の目は閉じてゆき 俺は強く大地と抱き合う 俺たちは出来なかった、出来なかった 周りを見廻すことが でも息子たちが、息子たちが戦闘に出かけるぞ 誰が俺と代ってくれる、誰が攻撃に向う? 誰があの橋にたどり着ける? その時突然願ったのは——あの子だ あのダブダブ服の少年兵 俺には笑いを浮かべるひまがあった 俺は目にした——誰が後に統いているか 俺たちは出来なかった、出来なかった 周りを見廻すことが でも息子たちが、息子た.ちが戦關に出かけるぞ 爆発に消される心臓の音 だが俺のは俺を 強く打つ、 そして教える 俺の最後は最後なんかじゃない 最後とは誰かの始まりだと 今、俺の目は閉じてゆき 俺は世を去り、誰かがくる 俺たち、出来なかった、出来なかった 周りを見廻すことが だが、息子たち、息子たちが戦闘に出かけるぞ
© 宮沢俊一. 翻訳, ?