ある者はマホメットやアラー、ある者はイエスを信じ、 ある者は何も信じない、みんなへの面当てに悪魔すら。 インド人たちはすばらしい宗教を考えついて、 われらは息をひきとっても全くは死なないという。 君の心が向上を目指していたなら、 またも希望にみちた生をうける。 だが、君が豚として生きたのなら、 その姿のまま残っているのだ。 つらい目にあっても、叱責や罵りに馴れよ。 またも意地悪として生まれてくるのは情けないぞ。 もしもこの人生で敵の最期を見れたなら、 君は次の生 (せい) で、正しい、銳い目をもつだろう。 なんとか当り前に生活したまえ。 陽気にやってゆく動機はあるさ、 ひょっとしたらボスのなかに 君の魂が移ってゆくのだから。                 君が門番として生きていても工事監督に生まれ変わり、 そのあと監督から大臣にまでもなってゆくのだ。 だが、もし唐変木なら、バオバブ1 に生まれ、 そして千年もバオバブのままだ、倒れるまで。 おうむとして生きるなぞ情けない、 長生きのまむしであるのも同じ。 この人生で至上最高なのは、 高潔な人間であることだ。 かくて、何が何なのか、何だったのか、われらには謎だ。 遺伝学者は遺伝子と染色体で狂ってしまった。 あの禿た猫は、まえの生では悪党で、 この優しい人は、よい犬だったかもしれない。 ぼくは興奮して跳ねあがり、 ぼくは誘惑から遠ざかる。 なんという便利な宗教を インド人は考え出したのだ。
1 アフリカ産の巨木。
 
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