国境からわれらは地球をあとへ回した。
この戦争の初めにはそうだった。1
しかし、われらの大隊長が逆に回した、
ウラル地方2 を足場にして。
ついにわれらに進撃命令がでたのだ、
われらの足跡とパン切れを取り返すのだ。
だが、覚えているぞ、太陽が動きを変え、
東に沈まんばかりだったことを。
われらは地球の上をのんびりと歩んではいない、
花や草をわけもなしにむしりとってはいない。
われらは地球を長靴で押しやるのだ、
手前から、自分の方から。
東からの風に麦わらの山はかがみ、
羊の群は岩かげに身をひそめる。
地軸をわれらはてこなしで動かしたのだ、、
打撃の方向を西に変えることで。
驚くな、あるべき所に夕焼けがなくても、
最後の審判の日とは老人向けのお伽噺さ。
ただ地球を望む方向に回しているだけ、
進軍するわれら交代中隊が。
われらは匍匐 (ほふく) 前進し、斜面にへばりつき、
湿地のでっぱりを抱きしめる、恨みつつ。
そして地球を両膝で押しやるのだ、
手前から、自分の方から。
ここでは誰も決して見つけだせはしない、
両手を上に高く上げた者たちを。
すべての生者が感じている肉体の有用性—
死者は盾にされるのだ。
あの愚かな鉛は全員をすぐ見つけるか?
どこに当たるのか、前からか、後からか?
誰かが前方の永久ト一チカに取りつき、
大地はその死に一瞬凍った。
おれは足の裏をうしろに押し残してゆく、
倒れた者たちを横目で悼みながら、
おれは大地を両肘で回すのだ、
手前から、自分の方から。
誰かがすっくと立ち、敬礼するように
宙を飛ぶ弾丸を厚い胸で受けとめた。
それでも西へ西へと大隊は這ってゆく、
太陽が東の方から昇るように。
われらは腹を泥につけ、沼の中にあがき、
あまりの悪臭に思わず顔をそむける。
しかし、今は太陽は空を正常にめぐっている。
われらが西へ突進するからだ。
両手、両足はちゃんとあるか、ないか!?
結婚式で酒の味見でもするかのように、
地球を口でもって草の向こうへ引っぱる、
上向きで、下向きで、手前から。
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