ここでは樅 (もみ) の枝が宙におののき、 ここでは小鳥がおどおどさえずる。 お前は魔法にかけられた森に住む、 逃げ去ることはできないという場所に。 実桜 (チュロームハ) 1 が下着のように白く枯れようと、 リラの花が雨のように散り降ろうと、 どうであれ、おれはお前を連れ去る、 芦笛の音のやさしく響く宮殿へ。 魔法使いどもはお前の世界を、 おれから、この世から千年も隠している。 そしてこの魔法の森が一番 美しいのだとお前は思いこんでいる。 木の葉に朝露が降りなかろうと、 月がうっとおしい空と争おうと、 どうであれ、おれはお前を連れ去る、 海に突きでたバルコンのある高殿 (たかどの) へ。 いつか、いつの日にか、いつの時にか おれの所へそっと脱けでておいで。 おれはお前を両手にしかと抱いてゆこう、 決して見つけられることのない場所に。 盗まれてほしいのなら、奪いだそう。 こんな努力が無駄となっていいものか、 楽園があばら屋でも断らないでくれ、 もし宮殿にも高殿にも誰か住んでいたら。
1 初め白い花、それから葉がつく。
 
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