なんで君らは山にゆくの ?とぼくはきいた。 君は頂 (いただき) を目指し、闘志に燃えていたね。 飛行機からならエルブース1 はよく見えるというと、 君は笑って、 ついてらっしゃいといった。 その時から君は親しい、いとしい人になった。 ぼくの女アルピニスト、女登山家よ。 初めてぼくを割れ目から引き出した時、 君はほほえんでいたね、ぼくの女登山家よゾ それからいくつも呪われた割れ目を越えた。 君のつくった夕食を うまいなとほめたら、 首すじを二つ軽くたたかれたが、 ぼくはむくれるどころか、はっきりいったね。 おお、なんて君は親しく、いとしいんだ、 ぼくの女アルピニスト、女登山家よ 割れ目のなかのぼくを探し出すたびに、 君はぼくを叱ったね、ぼくの女登山家よ! それからいつも一緒に登るようになったが、 なぜ君はぼくに対して疑い深かったのだ? 君はぼくを楽しそうに引っ張りあげたね、 ぼくのしなやかな女アルピニス卜よ! おお、なんて君は冷たく、憎らしいんだ、 ぼくの女アルピニス卜、女登山家よ! 絶壁のうえでぼくを引きあげるたびに、 君はぼくを罵ったね、ぼくの女登山家よ! 君のしたでぼくは力をふりしぼった、 君のその足許までもう一歩のところだ、 さあ、はい登り、 もう、けっこう !といおう。 そのとたん、ぼくは落ちたが、いう間はあった、 おお、なんて君は親しく、いとしいんだ、 ぼくらの女アルピニス卜、女登山家よ、 ぼくらは一本のザイルにつながれている、 ぼくら二人は登山家カップルになったんだね.
1 コーカサス山脈の山。
 
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