俺は全身に光を当てられ、みんなに見られている 俺は慣れた作業にとりかかる マイクに向って立つ、聖像を前にするように いやいや、今日はまるで銃眼を前にするようにだ マイクに気に入られない人だ、俺は 俺の声にもみんなうんざりらしい 俺がどっかで間違うと その嘘を無慈悲に拉大しやがるのだ フットライトが胸を照らし フォロー・スポットが意地悪く額に刺す ステージ・スポットに目もくらみそう それに暑さ、この暑さ、暑さ 今日の俺はとくにしわがれ声 でも調子を変えるのはやめとこう もし俺が心をひん曲げると 絶対に歪みを直してくれないもの この悪党マイクめ、刃物より鋭くて 聴覚は絶対的、どんな嘘をも聞き分ける 俺の気持が乗ってなくても平っちゃらで 楽譜通り歌えばそれで満足 フットライトが胸を照らし フォロー・スポットが意地悪く額に刺す ステージ・スポットに目もくらみそう それに暑さ、この暑さ、暑さ ぐにゃぐにゃの首の上でこのマイク 蛇のようなその頭をめぐらす 俺が黙ろうものなら、すぐ嚙みつく 俺は気を失うまで、死ぬまで歌わされる 動くな、歩くな、絶対に 俺は毒ある舌を見た、この蛇め、分かってるぞ 俺はまるで蛇使い 俺は歌わず、コブラを操る フットライトが胸を照らし フォロー・スポットが意地悪く額に刺す ステージ・スポットに目もくらみそう それに暑さ、この暑さ、暑さ 貧欲なこのマイク、ひな鳥のように ロから音を貧り取る 俺の額に九グラムの鉛を貼りつけ 手を上げさせない - ギターに縛りつけられて またも、こいつに終りはない! 俺のマイグは一体なんだ? - 答えはない? 今や顔を照らす燈明のよう だが俺は聖者じゃないし、マイクも光らぬ         俺のメ ロディは音階より簡単 だが誠実さから少しでも外れると すかさず横びんたをくわせる 見えない影がマイクから伸びて         フットライトが胸を照らし フォロー・スポットが意地悪く額に刺す ステージ・スポットに目もくらみそう それに暑さ、この暑さ、暑さ
© 宮沢俊一. 翻訳, ?