俺たちが残してきたのは崩落と日没だけ ああ、せめて僅かでいい 目に見えなくていいから飛栩が欲しい! 信じたいものだ、わが黒マント隊の面々が 俺に今日、日の出を見る可能性を与えてくれることを 今日みんなの前で言われた、『立派に死んでくれ !』と よ一し、やってみよう !どうなるか見てみようじゃねぇか ただ俺は、ひとのタバコを吸いながら思った 『いろんな死に方があるだろうが - 俺は日の出が見たい』 特別攻擊隊は工兵にとっちゃ特別な名誉だ 木の蔭からナイフを手に俺の背中を襲うなよ! そんなのは無駄な努力 - 俺は喉を引裂かれたって 今日はくたばるまでに日の出を見てやる 俺たちは敵の背後を進んだ 眠たげな奴らに斬りかかりたい気を押えながら 不意に気づいたのだ、鉄条網をくいちぎった時 まだたわいもない、青い、だが銳敏なひまわりが もう頂を日の出の方に向けていた 六時三〇分、俺たちの残してきたのは - もう分ってるぞ 崩落や日没だけじやなく、飛翔も日の出もだ 二本の導火線を歯で剝きながら 日の出は見なかったが、感じたぞ まさに日が昇らんとしていること 人数の減った攻撃隊がこっちへ戻ってくる 何があろうとどうってことない 大事なめは保塁が爆破できたこと 俺は信じたい、こうした激しい仕事が あんた方には 日の出を見る可能性をただで与えてくれるだろうと
© 宮沢俊一. 翻訳, ?