自分が悪いんだが、涙が流れ そして嘆く 他人の轍に落ち込んだんだ 深い轍に 俺は自分の目的を立てていた 自分で選んで だが、他人の轍から抜けられない 端が銳く、滑っこい。     いやな野郎どもだ、こんな轍つけやがって じきに我慢できなくなるぜ 走りながら、出来の悪い生徒のように わめいて見る、轍を、轍が、などと。 でも、なんで俺、こんなに堪え性がないんだ いいんじゃねえのか、他入の嫩でも 他人の轍を走ってりゃ 文句ぐだぐだ言う奴もいねえしさ ! おまんまにだってありつけらぁ 他人の轍に収ってりゃあな。 それで俺、思い込もうとしたよ 俺だけじゃあねえや、他人の道走るのは     このままでいいや !走り易いしよ みんなが行くとこへ行くまでのことよ。     しかし、叫ぶ奴がいた、気が触れたように 俺の自由にさせろ !とな。 そして轍と戦いはじめた、馬鹿みたいに   この男、心の暖かみを燃やし尽くした この戦いで トラックだって滅茶々々さ   でも、轍の端を壊わし 轍は広くなったのだ。 でも、その痕は急に消え失せてる 変人は道の脇の溝に漬けられたんだ 俺たち、後から走る者を邪魔しないように 他人の轍が走り易いように。 俺だって、そのままじゃ済まなかった ス夕一夕一がイ力れてな こうなりゃあ走りなんてもんじゃねえ 這い回りだ 抜け出ること、押し出すことが必要だが 力がねえ、出ねえ ひょっとして誰かが助けに来てくれるんじゃ   ないかと思ってしまったが、 どっこい他人の轍だぜ。 唾がわりに泥や錆をひっかけて こんな他人の轍とはおさらばと あせればあせるほど穴は深まる 後から来る奴は絶望的だ。 骨の髄まで冷汗べっと0 板を渡して、前へ出て見る     見ると、春の出水に洗われた所がある そこは轍からの脱出口でもある     空転する後輪で懸命に泥を飛ばし 他人の轍へ別れのはなむけだ。 お一い、後から来る奴ら ! みんな俺のようにやってみろ ! 俺の後に続けって言うんじゃない 新しい轍は俺だけのもの 自分の轍を作って脱出するんだ。
© 宮沢俊一. 翻訳, ?