ギターいっちょう抱えて
あいつが歌う、歌う
しわがれ果てた声で
しどろもどろの歌を
だれも聴いちゃくれない
あいつの歌を、歌を
弦は張ってあるけど
なぜか響かない
猫だって啼くのに
犬だって吠えるのに
酒ににげこむあいつ
女も口説けない
ところがそんな奴が
恋に落ちたんだってさ
打ち明けようとすれば
汗が滲みだす
初めての恋に溺れてさえも、さえも
愛の手紙ひとつも書けない あいつ
かわりに あいつは
冷たい雪の上に
詩を書いたんだってさ
雪は溶け去る
でも雪はなん度でもようしゃなく降りつづく
なん度でも積もった雪に詩を書く
凍えた指先きで雪に書く恋文
笑わないでくれ そうさあいつは俺なんだ
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